ボーダー

さ、麻紀ちゃんの部屋はどこかな。

しおりを片手に、彼女の部屋を探す。
栞に気を取られていたから、勢いよく誰かにぶつかってしまった。

大丈夫かな？

「ごめんなさい、大丈夫ですか？」

って……麻紀ちゃん本人じゃん？

麻紀ちゃん、お風呂上がりなのか、まだ髪が濡れている。
いつも結んでいるから、髪をおろしているのがかなり新鮮。
なおかつ、色気がある。

ふんわりとシャンプーの香りがするのも、たまらない。

だけど、風邪引かないか、かなり心配。

「麻紀ちゃん、これ。
夕食会場に忘れ物してたって。」

ボクは麻紀ちゃんの小さな手のひらに､本人のケータイを乗せた。

｢ありがとう！
これ、探してたの！
これがないとテンション下がっちゃう。
見つけてくれて嬉しかった！

あ、麻紀も、これ。
ジャケットとマフラー、ありがとう。
おかげで、風邪ひきそうだったけど何とかなった！
外が寒い中急に暖かいところに入ったから、自律神経が不具合起こしただけみたい。」

すると麻紀ちゃんが夕方から借りっぱなしだったボクのジャケットとマフラーを律儀にも袋に入れて返してくれた。
そんな……気を遣わなくてもいいのに。

「ちょ、真くん？」

麻紀の額に、自分の額をコツンと当てた。

「うん、熱はないみたいだね。
良かった。

こんな廊下で立ち話させると、今度こそ本当に風邪引かせちゃう。
よかったらボクの部屋来る？｣

｢あ、ボクのこと……これからは"真くん"じゃなくて……"真"でいいからね？
ボクも"麻紀"って呼ぶから｡｣

ボクの言葉に頷いてくれた麻紀。
この後の告白の前フリだということに、鈍感な彼女は気付いてくれているだろうか？

男子部屋に先に入るように言って、ドアを閉める。

ボクと二人っきりになって緊張してるのかな。
頬を赤く染めてボクを見上げる姿が､食べちゃいたいくらい可愛い。
優くんとか一成くんが言ってたこと、あながち間違いじゃないな。

理性が吹っ飛びそうになる。

しかもショートパンツに生脚って……ショートパンツの下が気になるやつ。
というか、角度によっては下の一部が見えそうだし。
襲ってくださいと同義じゃない？

気付けば、麻紀の柔らかい唇にそっと口付けていた。
麻紀は拒むどころか、ボクのキスを受け入れてくれている。

｢麻紀。
ボク……好きだから｡
麻紀のこと。｣

唇を一度離して、そっと彼女に囁いた。