素敵すぎる上司
「そんなの、嘘だろ?」


「嘘じゃありません。何でしたら、明日の夜、彼と会う約束してますから、香取さんもお会いになりますか?」


「え? ああ、どんな奴か見せてくれ」


「あなたほど格好良くはない普通の人だけど、私にちょうど相応しい人です。では夜の8時に駅で、あなたは単なる会社の上司という事で、お願いします」


「分かった」


「では、私はもう休みたいので」


私は部屋のドアを開け、拓哉さんを冷めた目で見た。心の中で、『早く行って』と願いながら。そうじゃないと、今にも涙が出そうだったから……


「おやすみ」


拓哉さんが出ると、私はドアに鍵を掛け、声を殺して泣いた。

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