素敵すぎる上司
「分かった。迷惑かけちゃって、ごめんね?」


「迷惑ってほどでもないけどさ、おまえ、俺に嘘ついただろ?」


「え?」


「しつこく迫る上司に、俺を見せ付けたい、って言ったよな?」


「え、うん」


「あいつ、俺を見て黙ってたじゃん。しつこい男とは思えないし、なんでおまえが泣くんだよ?」


「それは……」


「本当はあいつの事、好きなんだろ?」

「………」

「どうなってんだよ?」


「ごめんなさい。言えないの」


「そっか。まあ、どんな事情があるにせよ、自分の気持ちに嘘をつくのは、良くないと思うぞ」

「………」

「じゃあな。今度会う時は、笑顔を見せてくれよな? 俺はおまえの笑顔が大好きだったよ」


「うん。今日は本当にありがとう。奥さんをお大事にね?」


「おお。またな」


佐藤君は手を挙げて去って行った。


いい人だったなあ。付き合ってた頃、好きにならなかったのが不思議なくらいだ。

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