俺様と奏でるハーモニー
「用意ができました。
まだ、練習をはじめて3回目なので上手くいかないかも知れませんが」
修さんの合図で、私のピアノから始まる。
しっかり防音されている音楽室だから、音の響きが悪いのは仕方がない。
それでも、本物のグランドピアノと本物の尺八の音色は、今までとは全然違った。
これは、本物にしか出せない音。
琴とはまた違ったイメージになったこの曲、結構いい感じになりそう、かもね。
尺八とピアノの掛け合いも、ぴったりだった。
何だか、お互いの呼吸が合ってきたのよね。
これってやっぱり、仲良くなったせい、だと思う。
修さんの尺八の邪魔にならないように、でも、自分がメインのときはしっかり自己主張して。
『春の海』って、尺八と琴がお互いにちょうどいいバランスで支えあう、理想的な夫婦、みたいな曲なんだって、初めて気がついた。
私たちも、こんなふうになれるかな……。