俺様と奏でるハーモニー
貸衣装の浴衣姿からスーツに戻ると、修さんの明らかにがっかりした顔が。
「もしかして、浴衣姿、気に入ってくれました?」
「当然。……なあ、浴衣、持ってるか?」
「ありますよ。浴衣はもちろん、紋付も付け下げ(つけさげ)も袴も……もう着られないけど振袖も」
私達の仕事上、卒業式に着る袴は必須アイテムなのよ。
だから一応、着物もそれなりに持っているんだけどね。
「今度、着て欲しい」
なぜかにやにやしている、このお方。
もしや、いかがわしいことでも考えてるんじゃないかしら……。
二人っきりのときに着るのは危険だわ。
あ、そうそう。ちょうどいい機会があるじゃないの。
「本間先生の結婚式で、付け下げを着ましょうか?
『春の海』にはぴったりかも」
そう言った途端、ものすごく嬉しそうな顔をしていますが。
「楽しみにしてる」
「もちろん、式場で着替えますよ」
……あからさまにがっかりした顔に変わったのが笑えたわ。