俺様と奏でるハーモニー
ほどよく酔いがまわってきた時、修さんが尺八を持ってきた。
「もしかしたら、今から練習するんですか!?」
ちょっと酔ってるから、今はちゃんと弾けないかも知れないわ!!
修さんはくすっと笑って、ミネラルウォーターを飲んでいた。
あら、さっきまでワインだったのに。
あ、そうか。『竹』を吹くからなのね。
「うちのじいさんがさ、俺に尺八を教えてくれたとき、最初に教えてくれた曲が、これだったんだ。
今日、吹かないと時期を逃す」
そう言って吹き始めたのは『たなばたさま』だった。
尺八独特の節回しで、明るいはずのメロディーが何となく切なく聴こえる。
この位なら弾けるわ。
部屋の隅に置いてあったキーボードの電源を入れて、伴奏をつけた。
夫婦になってはじめて演奏した曲が『たなばたさま』って、ちょっといいかもね。
織姫と彦星のように離ればなれになるのは嫌。
修さんとずっと一緒にいられますように。