俺様と奏でるハーモニー
まずは一度、二人で合わせてみる。
ピアノの蓋は開けないで、お互いの生の音が聴こえるようにしたほうがいいわね。
スーツを着た修さんと、着物の私。
実は着物を着てピアノって弾きにくい。
特にペダルが踏みにくいのよ、草履って厚底で滑るから。
毎年、卒業式は袴姿でピアノ伴奏だから慣れてきたけどね。
椅子の高さを調節して、一度ペダルだけ踏み込む。
これでよし、と。
……2回合わせてみたけど、我ながらいい出来。
ただ、今はお客さんがいないから音は響くし雑音もない。
ご歓談の途中で始まる余興は、お酒の入ったお客さんにどうウケるかが重要なのよね。
余興のトップバッターは私達。
このままやっても、聴いてもらえないかも。
修さんと相談。
「いいね、それ。
見栄っ張りだから、きっと断らないで出てくるぞ」
司会者にも打ち合わせ。
さて、上手くいくかしら。