俺様と奏でるハーモニー


「じいさんから尺八を習って3年目、中一の時の話なんだけどさ。

そのころやっと中伝(ちゅうでん)の免許をもらった俺の初舞台が、市内の合同音楽祭だった。

じいさん、喜んでくれて、紋付袴を揃えてくれたんだ。

俺、子どもの頃はチビで、中一なのに150しか身長がなくて、もちろん子供用の袴だった。

それを着てホールへ行ってみたら、自分の中学校の吹奏楽部も来てたんだよ。

袴姿の俺を見た同級生の子が『七五三みたい』って言ってさ。

その場にいた奴らに、大爆笑されたんだ。

『尺八なんてじじくさい』だの『七五三』だのさんざんからかわれて、それ以来、尺八単独か、三曲(注:琴、三味線、尺八)の演奏会にしか参加できなくなったよ。

クラスでもそれをさんざんネタにされてずっとからかわれたな。

以来、尺八を吹くことも、ずっと隠してたんだ。

引越しの日、由奈に『何の楽器?』って聞かれて、素直に答えなかったのは、そのせい」


悲しそうな顔をして、尺八を見つめている修さん。


中学生位の年頃って、結構残酷なことをしれっと言っちゃうのよね。


『七五三』って表現した子に悪気はなかったのかも知れないけれど、13歳の男の子にとっては傷つく言葉。


卒業までずっとネタにされていたとしたら、それは可哀想。


それじゃあ、自信が持てるように、私が袴姿に惚れ込んじゃったこと、教えてあげましょう。



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