俺様と奏でるハーモニー
ピアノのイントロが流れる。
尺八の澄んだ音色が入ると、会場の空気が一気にぴーんと張り詰める。
最初はゆっくり、穏やかに。
そして次第に強く、激しく、盛り上がる旋律を尺八とピアノが掛け合いながら奏でる。
まさに真剣勝負の尺八とピアノ。
互いに主張して、譲って、また前に出て。
この掛け合いが難しくて、何度も口論しながら練習したけれど。
今、こうやってみんなの前でちゃんと演奏できるようになったのは、やっぱり師範の修さんが私に的確なアドバイスをしてくれたから。
曲は再び、穏やかな『春の海』へ戻り、ピアノのメロディを優しく、美しく響かせる。
エンディングはしっとりと、最後の一音、ペダルの上げ方にも気をつけて……。
演奏が終わった途端、ここはコンサート会場だったかしら、と勘違いしたくなるような、きめ細かい拍手の嵐。
いい拍手を頂いて、本当に嬉しかった!
立ち上がり、礼をしようとした時、ちょっぴり足がふらついてしまった。
すぐに修さんが支えてくれたので、何とか転ばずに済んだけど、耳元でこう言われた。
「だからあんまり飲むなって言っただろ。
……帰ったらおしおきだからな」
そんなことを囁いているのに、紋付袴姿で尺八を構えて真面目な顔をしている俺様が、今はちょっぴり可愛く見える。
今までの俺様発言も、全ては私のせい、だったんでしょ?