俺様と奏でるハーモニー
「まあ、他愛もないことなんだろうけどさ。
生徒の対応である先生と対立して、お互い『言った・言わない』の水掛け論になって、それから俺、打ち合わせの内容は全部教務手帳に書いてたんだ。
それでも、やっぱり『でっち上げ』だって言われたことがあった。
味方もいなかったしな。
頭にきてICレコーダー買って、常に会話を録音しながら打ち合わせしていた時期があるんだ。
録音したのを聞かせたら、自分の発言を撤回したけれど、今度は録音した行為自体を責めてきやがった。
もう、ここにはいられないと思ったよ」
……だから、私と森本先生との会話も、録音しようと思ったんだ、きっと。
「それは、辛かったでしょうね……」
「まあね。今に見てろよ、なんて思ってたけどさ。
それに、学校を出てからも『先生』って呼び合うせいで、あの狭い島だからみんなが俺を『先生』って呼ぶようになるんだよ。
俺は生徒の先生だけど、地域住民の先生ではないし、そんなに偉くない。
『先生』は尊称だ。島民全体から尊称を付けられるような偉い人間じゃないのに、それが当たり前になっている教員が嫌だった」
……それで、私にも頑固に『先生禁止』だったんだ。