霊務3
「バンド娘-4」





しばらくして、
沈黙を破るように
話を始めた。







「朝はいいね…

ここの森が好きでね。

ほら、
こんな清々しいだろ?」








確かに、
夜は不気味だが
朝は心落ち着く場所に
早変わりする。







劇的ビフォーアフターの
匠も
ビックリの変身技だ。







「アタシ
夜は街に居るんだけど、
一仕事終えた朝に
よくここに来るんだ。

そしたら毎日
人を驚かせてる
アンタが
いつも目に入ってサ」








「え…?
毎日ですか…?」








そう言うと、
その霊は笑いながら
肩をポンポン叩いてきた。








「アハハ!
敬語はいらないだろ!

どう見てもアンタの方が
年上じゃん?

アタシが使わないのに
アンタが使ったら
逆だろ!

ああ、ちなみに
アタシはキサラ。
21歳!

ヨロシク!

アンタは?」








ずいっと
突き出された手を
慌てて里子は
握り返した。








「あ、諸星里子です。
21歳です。

よ、よろしく
お願いします」







するとキサラは
顔をグッと近付けた。








「にじゅういち?!!

なんだ、じゃあアタシと
同じ歳じゃないか!

死んだ年は
何年前?」








「一年前……です」









「だから、敬語は
いらないって!

アタシは
ん~っと10ヶ月くらい
前かな?

そう考えると、
やっぱアンタの方が
先輩だね!」








さっきから
えらい元気に話してくる。








ただでさえ
声は馬鹿でかいのに、
距離が近すぎる。







声のか細い里子と
話しているので、

遠くから
目を瞑って聞けば、
キサラの独り言のようにも
捉えられそうなくらいだ
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