彼だけのお姫様♪

翔は今まであたしが見たことのないぐらい怒ってて、聞いたことのないぐらい怖い声で男のこと怒鳴ってた。






「ひぃぃぃ」





男はあたしに馬乗りになってたときとは大違い。







翔を見た瞬間怖がって、『ひぃぃぃ』しかいってない。






そんな男が笑えて、でも笑えなかった。





顔の筋肉が全然動かせそうにない。





もう動く体力もない。




指も1mmも動かせない。




気がつくと、男は消えてて。というか逃げてて、部屋には翔とあたしの二人だけだった。




翔はあたしに近づくと、丁寧な仕草であたしのはだけた制服を直してくれた。




あたしの制服を直すとすぐに翔はあたしを抱きしめる。




そのとき、ちょっとだけ翔の手が震てた。





「ゴメンな。俺、守るとか言っといて全然守れてない。彼氏失格だよな…。ホントごめん。怖かっただろ。もっと早く来てやれなくてごめんな」





翔はあたしを抱きしめてからずっとずっとあたしに謝ってばっかりだった。





『翔は悪くないよ』って言ってあげたいのに、声がでない。





ただ翔に抱きついて泣くことしかできなくて……




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