妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
苛つくまま怒鳴ったそはや丸に、右丸は驚いたように、目を見開いた。
そはや丸は、自分が何を言ったのかよくわからないまま、これ以上は喋りたくないというように、険しい顔のまま黙り込んだ。

何か、重要なことを、言ったような気もする。
が、あえて考えることはしなかった。

右丸は、投げられた袴に視線を落とし、ちらりとそはや丸を見て、遠慮がちに口を開いた。

「あ、あの。一つだけ、教えてください。袴に血がついておりますが、呉羽殿は、大丈夫なのですね?」

おずおずと言う右丸を、そはや丸はぎろりと睨んだ。
どうも、苛々する。

「安心しな。あいつは怪我は、してないはずだ。それは、物の怪の血だろ」

「そ、そうですか。・・・・・・よかった」

ほっと安堵のため息をつく右丸の様子が、そはや丸の神経を、また逆撫でする。

「さっさと車を動かしやがれ!」

気づけば、車は僅かに動いてはいるものの、右丸が牛をそっちのけで、そはや丸と話していたため、ほとんど止まっているのと変わらなくなっていた。

「は、はい!」

そはや丸に怒鳴られ、右丸が慌てて牛を操り、車は夜道を三条邸に向けて走り出した。
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