妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
蓮台野に帰り着くと、そはや丸はいつものように、胡座をかいた足の上に呉羽の頭を乗せ、鼻歌を歌いながら、呉羽の濡れた髪を梳く。

今日は陽が西の空に落ちつつある夕刻に水浴びに行ったため、すでに陽は暮れている。
うとうととまどろんでいた呉羽に、そはや丸は、ふと思いついたように声をかけた。

「お前、右丸をどう思ってるんだ?」

半分夢の中だった呉羽は、ぼんやりと目を開けた。

「右丸・・・・・・? 烏丸の器として、相応しいか、か?」

やれやれ、というように、そはや丸は小さく息をつく。

「そうだなぁ。いいんじゃないかな。気を見るのは得意じゃないが、悪い感じもしない。烏丸が表に出てるのしか、印象にないなぁ」

ぼんやりしたまま言う呉羽に、そはや丸は吹き出した。
呉羽の中では、右丸の中の烏丸、というより、断然烏丸の占める割合のほうが大きいようだ。

「右丸も、可哀相な奴だなぁ。お前、右丸を烏丸としてしか、見てないだろ」

そはや丸の言葉に、呉羽は目を上に向けた。

「右丸とは、そんなに話、してないんじゃないかな。お前とのほうが、よく喋るような気がするぞ」

「ま、そうかもな。奴のような初心(うぶ)い奴は、お前のような女でも、意識してしまうもんだ」

「・・・・・・私のような、か」

じろりと睨む呉羽の視線を受け流し、そはや丸は髪を梳き続ける。

「お前は年相応の恥じらいもないし、がさつだが、見てくれはいいからな」

「そんなもの、見る人の好みだろう」

興味なさそうに、呉羽が言う。
< 116 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop