妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
多子の後について簀の子を進み、程なく寝殿らしき建物の前に着いた。
「父上、多子です。お客様を、お連れしましたよ」
部屋の前で声をかけ、入りますよ~と言いながら、多子はそのまま部屋の中に入っていく。
呉羽は簀の子に平伏した。
「お呼びを受けて参りました、呉羽にございます」
「多子、部屋へさがっていなさい」
張りのある低い声がかかり、どこか不満げにしていた多子が、しぶしぶ部屋を出て行った。
続いて、ぱちんという扇の音を合図に、控えていた女房らも、皆さがっていく。
「外法師、近う」
誰もいなくなってからかけられた声に、呉羽は立ち上がり、腰からそはや丸を抜き取って、素早く奥に座す男の前に移動した。
「遅かったのぅ。先程お主を迎えにやらせた女房が、腰も立たないほど震えながらやってきたぞ。お主がまだここにおらぬことに、それはそれは狼狽えておった。そのお主が、何故多子姫を引き連れて、反対側からやってくるのだ?」
目の前の男は、三十ぐらいだろうか。
なかなか整った顔立ちに、酷薄そうな目をした、壮年の男だった。
彼がこの東三条邸の主、左大臣・藤原頼長である。
「父上、多子です。お客様を、お連れしましたよ」
部屋の前で声をかけ、入りますよ~と言いながら、多子はそのまま部屋の中に入っていく。
呉羽は簀の子に平伏した。
「お呼びを受けて参りました、呉羽にございます」
「多子、部屋へさがっていなさい」
張りのある低い声がかかり、どこか不満げにしていた多子が、しぶしぶ部屋を出て行った。
続いて、ぱちんという扇の音を合図に、控えていた女房らも、皆さがっていく。
「外法師、近う」
誰もいなくなってからかけられた声に、呉羽は立ち上がり、腰からそはや丸を抜き取って、素早く奥に座す男の前に移動した。
「遅かったのぅ。先程お主を迎えにやらせた女房が、腰も立たないほど震えながらやってきたぞ。お主がまだここにおらぬことに、それはそれは狼狽えておった。そのお主が、何故多子姫を引き連れて、反対側からやってくるのだ?」
目の前の男は、三十ぐらいだろうか。
なかなか整った顔立ちに、酷薄そうな目をした、壮年の男だった。
彼がこの東三条邸の主、左大臣・藤原頼長である。