妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
「右丸が身体の中で、お前の話を聞いてるってことは、ないってことかい」

そはや丸が口を挟んだ途端、烏丸は呉羽に飛びついた。

「おや、お前。俺が怖いのか」

にやりと笑い、そはや丸は烏丸のほうへ顔を突き出す。
つくづく他のものを苛めるのが好きな男だ。

「きゃああ! お姉さん、助けて!」

烏丸は、必死に呉羽に登ろうとする。

元は小さいのだろう、多子が持てたぐらいだし。
だが今は、身体は右丸だ。
十二、三歳の男子に縋り付かれて、呉羽は危うく倒れそうになる。

「こらっ、やめんか! そはや丸、余計なことするんじゃないよ」

必死で烏丸を引き剥がしながら、呉羽は叫んだ。
そはや丸は、にやにやしつつ、少しだけ呉羽から離れた。

「お前はやっぱり烏丸だな。右丸だったら、呉羽にそんなに引っ付くなんざ、とてもできないぜ」

その烏丸は、相変わらず呉羽にぴたりと引っ付いている。

「烏丸、落ち着け。お前は物の怪だから、そはや丸の怖さがわかるのだろうが、奴の主は私だ。私が命じない限り、そはや丸がお前に牙を剥くことはないよ」

「ほんとに?」

潤んだ朱い瞳で見上げてくる烏丸の頭を乱暴に撫で、呉羽はそはや丸を睨んだ。
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