妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
「で? 俺はいつまで、人型でいればいい? 刀に戻ったほうがいいか?」

素知らぬ顔で涼しげに言うそはや丸の袖を、多子が引っ張った。

「ちょっと待って。今ここで刀に戻ったら、右丸にバレてしまうんじゃないの? つまらなくない?」

「ああ? お姫さんは、俺が例え刀でも、右丸は安心しないって言わなかったか?」

「そうだと思うけど、万が一、よ」

逢魔が時(おうまがとき)の化け物屋敷の前での会話とは思えない。
が、多子は、いたって真剣だ。

「さっき烏丸は、右丸は寝てるって言ったじゃねぇか。おい、お前が前面に出てるときは、本当に右丸は寝てるんだろうな? 周りで何が起ころうと、気づくことはないのか?」

再びそはや丸は、烏丸に声をかける。
烏丸は呉羽に引っ付いたまま、こくこくと頷いた。

「おいらは目が覚めたら、右丸の周りを身体の中から見ることができるけど、ただの人間の右丸には、そんな力は、ないはずだよ。おいらと右丸が入れ替わるのも、おいらしかできないんだ。えっと、おいらは普段は、今みたいに前に出ることはないんだけど、お姉さんに呼ばれたときは、自然と引っ張られるでしょ。お姉さんは、おいらに名を与えた、おいらの主なんだし」

ここで烏丸は、何故か少し照れたように、頭を掻いた。
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