【短編】白雪



あたしは自分の部屋でベッドに寝転んで台本を捲った。


今日は雅人の仕事があるから会えないんだ。



「お姉ちゃん!ご飯だよ~」


妹の美亜がドアの前で言った。



「あ、うん!すぐ行く~」


机の上に台本をそっと置いて、あたしは部屋を出た。



リビングに入ると、美味しそうな香りがした。


テーブルにはお母さんの作った料理がたくさん置かれていて、真ん中には大きなケーキ。


あたしのドラマ出演のお祝いらしい。



「やったな~雪奈!!」


お父さんがビール片手にハッハッハッと笑う。



「さすが雪奈ね!お母さん鼻が高いわ~」


お母さんもご機嫌で、珍しくお酒を飲んでいる。



「お姉ちゃんすごいね!憧れるぅ」


美亜も、いつもよりずっと高い声でキャアキャア言ってる。



あたしが芸能界に入るきっかけはこの人達。


勝手に雑誌モデルのオーディションに申し込まれて、何がなんだか分かんないうちに受かってた。



今では仕事が楽しいし大好きだけど、あれがなければあたしは普通の女子高生やってて雅人に出会って付き合うこともなかったんだろうなぁ…。


そう思うと、なんだかありがたくなる。



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