【短編】白雪

もうツリーは飾り付けが施されていて、イルミネーションでキラキラ光って少し眩しかった。

手を握ったまま、あたしに背中を向けて雅人は立っている。



「…雅人?…っきゃ!!」


首を傾げると、急に変わる視界。



瞑っていた目を開けると、目の前は真っ黒で。

雅人のシャツだと分かるのに、そう時間はかからなかった。



「え?何ー?」

「わぁっ!大胆」



耳に入ってくる声に、恥ずかしくて身体を離そうとすると、さらに力の強まる腕。


それに比例するように、大きくなる周りのどよめき。



「ちょっ、雅人!…あっ」


大きな声で呼んでしまった雅人の名前に、慌てて口許を押さえても後のまつりで。



「えっ?雅人?」

「あっ!そう言えば似てるっ!!」

「本人?」

「うそっ!!!」

「あの女誰!?」



あっと言う間に、高く小さな女の人の悲鳴が広がる。


< 29 / 36 >

この作品をシェア

pagetop