【短編】白雪
綺麗なマンションの前で、車は止まった。
あたしは辺りを軽く見渡して、ドアを開ける。
「泊まっちゃダメよ~?明日も学校あるんだから!」
車から降りると、井上さんが運転席の窓を開けて言う。
「分かってるって。親にも許可取ってないし。じゃあ気をつけて帰ってね」
あたしはヒラヒラと手を振って、マンションの中に入った。
ケータイを取り出して、電話をかける。
《もしもし》
呼び出し音が何回か鳴って、相手は電話に出た。
声が低いから、多分今まで寝てたな。
あたしは小さく笑う。
「もしもし雅人?あたしだけど」
電話の相手―雅人はすぐに分かったらしく、
《今開ける。待ってて》
と言って電話を切った。