そこを行く人【短編】
忘れているくらいの呼吸。
水中を行くような歩調。
それでも足元ではガラスや砂利がこすれあって、短い悲鳴のような音を断片的に主張する。
それらを宥めるようなゆっくりとした足の運びは、高校の頃から変わっていない。
そうして、廊下の突き当たりまで、来る。
剥がれたペンキが床に散らばる、もう扉のない入り口。
視線を上げれば、かすれた字でそこが空き教室であることがわかった。
中は、満ちた霧が光を含んで漂っていた。
ぼんやりと見える窓枠と外の緑。
少し、眩しむように目を細めた。
水中を行くような歩調。
それでも足元ではガラスや砂利がこすれあって、短い悲鳴のような音を断片的に主張する。
それらを宥めるようなゆっくりとした足の運びは、高校の頃から変わっていない。
そうして、廊下の突き当たりまで、来る。
剥がれたペンキが床に散らばる、もう扉のない入り口。
視線を上げれば、かすれた字でそこが空き教室であることがわかった。
中は、満ちた霧が光を含んで漂っていた。
ぼんやりと見える窓枠と外の緑。
少し、眩しむように目を細めた。