僕はいつでもキミの傍に

俺は彼に……一つだけ嘘を吐いてしまった。

昨日の鈴村誠の事務所での出来事を全て彼に報告したが、一つだけ伝えていない事があった。

何故そんな事をしてしまったのか、自分でも分からない。

昨晩の光景が幾度も頭の中に繰り返され、それを振り払うように小さく首を横に振った。

鈴村誠が差し出した……あの写真。

幼い少女が映っているその写真を見たその時、俺は背筋が凍り付く様な感覚を覚えた。

俺はその少女を……知っていた。

遠い昔、たった一度、ほんの一瞬……目が合っただけの少女。
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