僕はいつでもキミの傍に

「こりゃひでぇな」

現場には慣れている筈の古川さんでさえ顔を顰めている。

十二畳ほどの広いリビングは、今では赤黒い大海に変わっていた。

その赤く不気味な海の中に、二人の元人間が横たわっている。

一人は四十代の女性。黒い少し癖っ毛の髪を上品に束ねた綺麗な女性だ。

彼女の胸には刺し傷があり、彼女の着ている白いシャツを赤く染めている。

もう一人は小太りの五十代半ばの男。

ブランド物の高級スーツに身を包んだ彼の体には数え切れないほどの刺し傷がある。

「……男女関係の縺れで刺し合った……とかではないですよね」

その問い掛けに古川さんが頷いて返した。

被害者の男の腕や芋虫の様な指には、ブランド物の時計や指輪が嵌められたままだった。

……強盗ではない。

……怨恨の線が強いな。

口に手を当て吐き気を堪えたまま、必死に思考を働かせる。

辺りを見回すと窓際に飾られた観葉植物が目に留まった。

綺麗に整えられた観葉植物の葉が、被害者たちの酸化した血で赤黒く染まっている。

……誰がこんなひどい事を。
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