僕はいつでもキミの傍に
44 柏木 瑞穂
『お願い……止めて……瑞穂……お願い……』
母が恐ろしい何かを見るかの様に目を見開き、繰り返し私の名を呼びながら必死に赦しを請う。
……やめて。
そっと辺りを見回すと、リビングの床に男が倒れているのが見えた。
……やめて。
小太りの中年の男は体の至る所から血を流し、すでに絶命している。
……やめて。
手にしたままの包丁からは、血がポタポタと垂れ落ち、床に点々と赤い水溜りを作っていた。
……やめて。
『瑞穂……お願い……お母さんが悪かったから……だから……』
母はそう言って見開かれた瞳からボロボロと涙を流し、懇願し続ける。
……やめて。