僕はいつでもキミの傍に
「貴方……誰?」
微かに震えた私のその問いに、男は小さく首を横に振って見せる。
「そんな事はどうでもいい事さ。大切なのは……君の事」
男はそう言うと私に向かって指を差す。
「君がここに来たのには理由がある。俺がここに居るのにも理由がある。そしてその答えは……君の中だけに」
そう言った男の指は、真っ直ぐに私の胸に向けられている。
そしてまるでそれに応えるかのように、私の心臓がドクドクと鼓動を速めるのが分かった。
ギュッと強く胸を押さえたまま、震える唇を微かに開く。
「……ごめ…ん……な…さ……い」
私の口から溢れたその擦れた声に、男は静かに私を見つめ続ける。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」
私の口から止めどなく言葉が溢れ、それはこの退廃的で悲しい世界に響き続けた。
頬を静かに涙が伝い、それはこの枯れた世界を音も無く湿らせる。
「……瑞穂ちゃん」
そう小さく名前を呼ばれ、そっと顔を上げた次の瞬間……私の頭に温かな手が触れた。
その大きな手はまるで小さな子供をあやすかの様に、私の頭を優しく撫で続ける。