僕はいつでもキミの傍に

「……さん。……霧島さん!!」

誰かが私を呼ぶ声が聞こえ、重たい瞼をそっと開くと……目の前に居る女の人の姿が目に入った。

そしてどこか遠くに聞こえていた音が、次第に鮮明に聞こえてくる。

慌ただしく人の動く音と、それから……大きな《泣き声》

「霧島さん!!おめでとうございます!!元気な男の子ですよ」

そう言ってマスクをした女の人が、私に向かって布に包まれた何かを差し出す。

そっとその布の中へと視線を向けると、そこには……生まれたての小さな赤ん坊が見えた。

小さな体を震わせ大きく力強い声で泣き続けるその赤ん坊を、ただ茫然と見つめる。

「よく頑張ったね……瑞穂」

その声の聞こえた方へと視線を向けると、そこには愛しい《彼》が立っていた。

彼は私の手をきつく握ったまま、嬉しそうに顔を綻ばせている。

「さ、抱いてあげて下さい」

そう言って女の人は私に向かって赤ちゃんを差し出す。

カタカタと震える手を伸ばし、そっとその子を胸に抱く。

胸に抱いた赤ん坊は小さな手をきつく握り締めたまま、この世に生まれた事を知らせるかの様に大きな声で泣き続ける。
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