僕はいつでもキミの傍に
「あ、俺のだ」
そう言って近藤は内ポケットから携帯電話を取り出した。
「もしもし?え?あ、はい。僕が近藤ですが…… え?」
近藤が少し驚いた顔をして、窺うように俺を見た。
「……すみません。私用の電話のようで……ちょっと失礼します」
そう言うと近藤は少し困惑した様な顔をして、携帯を耳に当てたままそそくさと部屋を出て行った。
……女か?
そんな事考えながら煙草をふかしていると、電話を終えた近藤が小走りで戻ってきた。
「……古川さん、すみません。……ちょっと私用が出来てしまったので、今日は先に帰ってもいいですか?」
近藤がいつもからは想像できないほど真剣な顔をして、真っ直ぐに俺を見つめた。
「……私用って?」
俺の問いかけに近藤は少し表情を曇らせると、静かに俯き小さく口を開いた。
「……母が……倒れたそうなんです。大した事はないみたいなんですが……心配で」
近藤はそれだけ言うと、俯いたままグッと拳を握りしめる。
「……そうか。それは大変だな。早く行ってやれ」
その俺の言葉に近藤は少し悲しそうに笑うと「ありがとうございます」と小さく頭を下げて、部屋から飛び出して行った。
近藤の消えていった扉を見つめたまま、フゥっとため息を吐く。