僕はいつでもキミの傍に
10 柏木 瑞穂
……雨。
……雨が降ってる。
真っ黒の空を見上げると、冷たい雨が頬を濡らした。
そっと辺りを見回すと、黒い服を着た大人達が沢山居る事に気付いた。
皆一様に表情が暗く、中には泣いている人もいる。
その中に一人の少年を見つけた。
黒い服に身を包んだ中学生ぐらいの少年は、ギュッと強く拳を握ったまま……泣いていた。
『……親父は自殺なんかしない。絶対に』
彼は何度もそう小さく呟き、服の袖で乱暴に溢れる涙を拭った。
『……どうして……こんな事に』
少年の傍で泣き崩れたまま、女の人が悲しそうに呟いた。
……ここは……どこ?
はっきりしない意識の中、懸命に状況を把握しようとしてみる。
しかしまるで靄が掛った様に視界は晴れず、足を動かす事も出来ない。
……雨は絶えることなく降り続け、次第にその強さを増していく。
『……どうして……どうして』
少年が涙を拭いながら繰り返すその言葉に、胸が小さく痛んだ。
そっと……自分の頬に指を触れると、雨とは違う温かな液体に触れた。
……私……泣いている。
……どうして。
少年と同じ言葉が私の頭の中を巡り、頭がズキズキと酷く痛んだ。
……私……あの子を知っている。
……どうして。
……どう……して……?