僕はいつでもキミの傍に

「……犯人は今、どこにいるんだろうね」

不意に彼が呟いた言葉にハッとし我に返ると、小さく首を振って答える。

「……分かりません。でも……」

そこまで言って口を噤んだ。

「……でも?」

近藤さんは不思議そうに首を傾げ、私の言葉の続きを待っている。

「犯人は……どんな思いであの二人を殺したんでしょうか」

その私の呟くような問いかけに、近藤さんは少し表情を曇らせて私を見た。

「怖くはなかったんでしょうか。……人を殺すということが」

……私は何を言っているのだろうか。

自分でも理解できない感情がどこからか湧き上がり、意見を求めるように彼を見つめた。

近藤さんはほんの少し悲しそうに瞳を揺らし、それから真っ直ぐに私を見た。

「……さぁ。僕には分からないな。……人殺しの気持ちなんて」

そう答えて彼が笑う。

その笑顔は笑っているのに、何故か泣いているようにも見える……不思議な笑みだった。

「……そうですね。私にも分かりません」

そう言ってニッコリと笑うと、近藤さんも同じように笑って見せた。

「お時間取らせてしまってすみません。……また何かあったら連絡してもいいですか?」

その問いに近藤さんは小さく頷くと、テーブルに置かれていた伝表を手にする。

「今日はありがとう。この人には明日事情聞きに行ってみるから、ついでに注意しておくよ」

そう言って近藤さんは名刺を振って笑うと、レジで会計を済ませ自動ドアの先に消えていった。
< 56 / 289 >

この作品をシェア

pagetop