僕はいつでもキミの傍に
12 鈴村 総一郎
……落ちていく瞬間はとても長く感じた。
地面に引き寄せられながら感じる風は、何故だか心地よい。
こんな状況に陥って尚、そんな事を考えている俺は……相当変わり者だと思う。
重力の影響を受け、地面に引き寄せられるように落ちていくのを感じたまま、そっとマンションの屋上を見上げた。
……おいおい、なんて顔をしてるんだ?
……これでお前の守りたいモノが守れたはずだろう?
心の中でそう言うと、屋上に佇む『影』に向かってニヤリと笑う。
……でも俺はヒネクレモノだからな。
……タダでは死んでやらない。
影は俺が地面に吸い寄せられる様を、ただ静かに見つめている。
……俺にはこれでお前の守りたいモノが守られるとは思えねェよ。
そんな事を考えながら、そっと目を閉じる。
様々な出来事が走馬灯のように過るとは聞いていたが、それはどうやらホントの様だ。
こんな状況になって思い出すものが何かと思えば、結局最後に思い出すのは……馬鹿でアホな息子の事だった。
……あ~あ、アイツ泣くだろうな。
今朝いつもの様に軽い口喧嘩を交わして別れたままのバカ息子を思い出す。
……アイツは気付くだろうか。
俺の残した秘密の暗号に、俺の隠した真実に。
……馬鹿だから無理かも。
そんな事を考え、クスリと笑った。
いや……アイツは俺にそっくりだ。
……だから絶対、諦めたりしない。
……必ずアイツはお前を見つけられる。
……馬鹿だから時間が掛るかもしれねェけどな。
「だから絶対覚えておけよ!!……クソガキ!!」
ニヤリと笑いそう叫ぶと……屋上の影が悲しそうに笑った気がした。