僕はいつでもキミの傍に

報道フロアのアナウンサーを映していたはずのテレビの画面が切り替わり、美しい庭が姿を現した。

そしてその中を優雅に飛び回る……蝶々。

色とりどりの美しい蝶が、綺麗に整えられた庭を飛んでいる。

どうやらそこは最近できたばかりの話題の昆虫館で、特殊な技術により蝶がこの庭から出れない様になっているらしい。

綺麗と思う反面……悲しくなった。

あの蝶々達は、あの小さな世界でしか生きられない。

空を舞う美しい羽があっても、決してその地から飛び立つ事は出来ない。

「……可哀相だね」

急に聞こえた声にそっと振り向く。

すると彼が両手にオムライスの乗ったお皿を持ちながら、切なそうに蝶々達の姿を見つめていた。

……同じ事、考えてた。

綾子以外の女友達の話曰く、私の考えは普通の考えからズレテいるらしい。

現にこの蝶々の庭を見てお客やアナウンサーは楽しそうにはしゃいでいるのに、何故か私には悲しい映像にしか見えない。

でも彼は……いつも私に近い考え方をしている気がした。

……まるで私の心が読めるみたいに。

だから彼の傍は心地よく、何故か安心する。
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