僕はいつでもキミの傍に

「……やめろ!!」

急に聞こえた怒声と振り払われた手に、身を竦めたまま一歩後ずさる。

初めて聞いた彼の怒声に、ただ茫然と立ち尽くした。

「あ……ご、ごめん。ちょっとビックリしちゃって。おっきな声だしてごめんな」

そう言って彼が困惑したように謝った。

「ごめん、ごめんね瑞穂。ホントごめん」

彼は何度も繰り返し謝り続け、泣きそうなほど悲しそうに顔を歪めていた。

「……平気。私の方こそ……ごめんね」

微かに震える声で答え小さく笑って返すと、彼は悲しそうな顔をして……私の頭を撫でた。

彼のいつもと変わらない大きくて温かな手が、いつもと変わらずに私の頭を優しく撫でる。

「ちょっと着替えてくる」

そう言って彼はクローゼットからTシャツを取り出すと、神妙な顔をしてお風呂場へと入って行った。

それを見届けた後……カタカタと手が震えた。

それは彼の怒声を聞いたせいでも、手を振り払われたせいでもない。
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