僕はいつでもキミの傍に

「……どうして、どうして、どうして」

まるで呪文のようにその言葉を繰り返したまま、雨の中を走り続ける。

……遠くから彼の声が聞こえる気がした。

彼が着替えている間にそっと部屋を出てそのまま走ってきたが、すでに彼も気付いている頃だと思う。

……どうして私は修ちゃんから逃げているの?

そう自分に問いかける。

そんな事を考える最中も、私の頭の中にはあの青い蝶が飛んでいた。

……美しい青い蝶。

……どうして今まで気が付かなかったの?

彼とは付き合ってから深い仲になった事は無かった。

今よく考えれば一緒にプールに行った事も、彼の着替えを見た事も無い。

……だから気付かなかった。

……彼の青い蝶に。

あの白い部屋で泣いていた少年。

彼と同じように脇腹に蝶が刻まれていた。

それならあの子が……修ちゃん?

でも……どうして?

……私はあの子を知らない。

不意に手帳に書かれていた不気味な文を思い出す。
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