僕はいつでもキミの傍に
17 楠 綾子
「……ごめん。見失った」
そう呟いた受話器越しの彼の声が震えている。
その声はまるでこの世の希望の全てを失ったかの様に、悲しく……切なかった。
「そう……私の家には来てない。携帯も置いて行ったんでしょ?」
その私の問いに彼は小さく答えると、「また連絡する」と言って電話を切った。
……嫌な予感がしていた。
今日の昼間、喫茶店で瑞穂の様子がおかしかった時から、とても嫌な予感がしていたのに。
……どうして、傍を離れてしまったんだろう。
自分の不甲斐なさに唇を噛み締め、部屋の窓から空を見上げた。
雨の降り続ける淀んだ空には星も月も見えない。
空を見上げていると、どこまでも続く闇に呑みこまれてしまう様な……そんな不安にかられた。
そっと……机の上に置いてある写真立てを見つめる。
そこには制服を着て、太陽の様に眩しく笑う瑞穂と私がピースをしている姿が納まっている。