僕はいつでもキミの傍に
19 近藤 健一
ピンポーン。
この鬱々とした静寂を切り裂く様に、場違いに明るい電子音が響く。
駅から少し離れた寂れたビルの三階。
その灰色の扉の前で、『彼』が出てくるのを待った。
「はい」
ドア越しに彼の声が聞こえ、ほんの少し体に力が入る。
「こ、近藤です」
緊張のせいかどもり気味に名乗ると、少し間が空いた後、ガチャリと灰色の扉が開かれた。
「……お久しぶりですね」
そう言って彼……鈴村誠が笑った。
彼と最後に会ったのは彼がまだ中学生だった頃で、すっかり逞しい青年に成長した彼はやはりあの時とは変わってしまった様に感じる。
それにあの時は……彼がこんな風に笑顔を見せる事などなかった。
「……はい」
そう言って同じように笑みを返すと、彼に促されるままに部屋へと足を踏み入れた。