僕はいつでもキミの傍に
22 古川 義之
朝の署内はガヤガヤと騒がしい。
忙しそうに人が行き交う中、早足で俺に近づく男を見つめた。
「おはようございます。昨日は……すみませんでした」
そう言って近藤は少し思い詰めた顔をして俺に頭を下げる。
「……お袋さんはどうした?今日は平気なのか?休んでもいいんだぞ?」
俺のまるで咎める様な問いかけに、近藤は眉を顰め、微かに額に汗を滲ませながら小さく息を吐いた。
「……すいません。嘘です」
そう正直に答えた近藤は、叱られた子供の様に肩を落としバツの悪そうに俺を見る。
「だと思ったよ」
ニヤリを笑い胸ポケットから煙草を出すと、百円ライターで火を点けた。
「……で、何か面白い事でも分かったのか?」
フゥっと煙を吐き出し問いかけると、近藤は昨日あった事を説明した。
俺に内緒でと楠綾子に呼び出された事。
そこで鈴村誠の名刺を受取った事。
鈴村に連絡を取り、実際に会いに行った事。
……それから柏木瑞穂がそこにいた事。
柏木瑞穂の写った写真の事。
霧島修司の事。
……青い蝶のタトゥーの事。
近藤の口から飛び出す情報を何とか吸収しようとしたが、最近衰え気味の脳みそが果たして全てを覚えきれたのかは自分でも疑問だ。