僕はいつでもキミの傍に

「……ほぉ。それはまた大変な一日だったな」

そう言ってニヤリと笑い、近藤が差し出した名刺を受取る。

……鈴村誠。

この名前には覚えがあった。

八年前……マンションの屋上から飛び降りた男の一人息子だ。

この事件は俺の担当だったが、状況から見て自殺と断定された。

その時、その男の息子が俺に突っかかってきた事を今でもよく覚えている。

『親父は自殺なんかしない!もっとちゃんと調べてくれよ!!』

当時中学生だった鈴村誠は俺の前に現れ、何度も繰り返しそう言った。

しかし男の死に特に不思議な点も見つからず、やはり男の死は自殺と断定された。

『……親父は絶対に自殺じゃない』

降りしきる雨の中、涙を流したままそう言った幼い彼の瞳が……今でも忘れられない。
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