狂おしいほどに、恋の戯曲を
部屋に入って携帯を探すと、
「あった!!!」
ベッドの近くに置きっぱなしにされていた携帯を見つけた。
が、私が手を伸ばす前に、その携帯はその場から姿を消した。
「何するんですか!返してください!!」
見事に春日さんに先に取られてしまった携帯を取り返そうと
背伸びしたりジャンプしたりしてみるものの、春日さんの高く上げた手には届かない。
「これ、取れたら家に帰してあげるよ。」
「む、無理ですよそんなのっ!なんでこんなことするんですか!」
それでもなお取ろうと奮起する私に、春日さんはため息ひとつ落とした。
「はあ。
ユイ、強がんな。困った時は人に頼れよ…。」
そう言う春日さんの瞳は、どこか悲しげで、私を通り越した遠い何かを見ているようだった。