狂おしいほどに、恋の戯曲を
「ここ使っていいから。」
そう言って案内された部屋は、昨日は入ることのなかった一室で、
綺麗に家具なども置かれているものの、春日さんがこの部屋を使っている様子はなかった。
「ここは少し前まで同居してた友達が使ってたんだけど、今は使ってないから好きに使っていいよ。」
「あ、はい。ありがとうございます…。」
同居してたからこんな良い部屋住んでるのかな?
春日さんの謎はますます深まるばかり……。
「ユイ、困ったことがあったら何でも言えよ?
家族だと思ってくれていいから。」
「え……?」
そう言った春日さんの瞳は真剣で、私は目を逸らすことが出来なかった。
昨日知り合ったばかりの見ず知らずの人間に、こうまでしてくれるなんて、
正直どう反応していいかわからなかった。
何も悲しいことなんてなかった。
なのに。この瞳から零れ落ちた涙は、何の意味を持っていたのだろう?
春日さんはそんな私を、優しく笑って見つめていた。
「俺たちは似た者同士だから。」
そう春日さんが呟いたのも気付かずに、ただただその日は泣いていた。