狂おしいほどに、恋の戯曲を
《拓人》




「だーかーらー、俺と美知流は本当にただの友達なんだって。」

「お前にとってはそのつもりでも、世間はどう捉えるか分からないのか?」




ずっとこんな調子で川崎さんに怒られている。



CM撮影を終え、美知流やカメラマンなどと夕飯をとることになった晩、浮かれていた俺はつい、飲み過ぎて。

なんで浮かれてたかって、ユイが俺に会いたがってくれたから。


いや、会いたがったのかは分からないけど、嬉しそうにしてた。


ユイと一緒なら多少腹がいっぱいでも絶対食べようと思っていた夕飯。

早いとこ切り上げさせてもらおうとちょっと飲んだ酒が、想像以上に俺をハイにさせ、気づいたら自分の家のベッドで。


どうやら同じ方向だから、とタクシーを共にした美知流にふらっとよろけたのを助けられた瞬間を撮られてしまったらしい。


ほんと、ついてねぇな。



あれからこの報道のせいでゴタゴタしててあまりユイと会えていない。

最初ユイとあったときは、この子を一人にしちゃいけない。と思って、少しでも力になってあげればと思っていただけなのに。


気づいたら、好きになっていたんだ。




あの翌日の朝、冷蔵庫には昨日の夕飯が残っていて。

俺が家を出るときに起きてきたユイに謝ると、
「大丈夫です、いってらっしゃい。」と、どこと無く距離の感じられる様子で見送られた。



それきり二日間顔を合わせていない。



< 52 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop