狂おしいほどに、恋の戯曲を




ガチャ。


夕飯はまだ材料が家にあったよね、と考えてそのままマンションへと帰宅した。


今日も一人、そう思っていたのに玄関には靴。

言うまでもなく春日さんのものだ。


(もう帰ってきてるの?)


その疑問はリビングから漏れてきた春日さんの声ですぐに消えた。


「……え?…あぁ……はは、……だな…………ああ。じゃあまたな、ミチル。」



ピ、と終了ボタンを押すのが見ずとも分かった。



だけど、私。

やっぱりこれ、辛い…。




「あれ?何してんのユイっ!」



ボーッと廊下に立っている私にそう言って、「おかえり。」と最大級に素敵な笑顔。

ふわっと香る匂いは、いつもの春日さんのもの。


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