教授との融点
一一一フゥ…


嗅ぎ慣れたタバコの匂いがあたしの耳を通り抜けた。


「重い?」


振り返って近過ぎた初瀬尾教授の茶色がかった目に、一瞬息が止まった。


「え…あ、ハイ。重くて」


「ならオレが」


あたしの脇を通り抜ける腕が圭吾と重なってドキドキする。


ダメ、ダメ。


圭吾は圭吾、教授は教授。


ドキドキを胸の奥に引っ込めて標本室の鍵を閉めた。
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