君に逢えない理由
高校を辞める。
そういった僕に、母さんはただ一言。よく決めたじゃん、と笑ってくれた。
それだけで、どれほど心配をかけていたのかが分かって、涙が出そうになった。
駅前の郵便局から外へ出ると、僕は昨日見つけた公園へと足を運んだ。
ミズホへのメールは、まだ返していない。
入学式は、もう終わっただろうか。
何だか、すごく不思議な感じがした。自分の決断が、こんなにも世界の色を変えるのかと少し驚いた。
公園には、誰もいなかった。
僕は昨日のベンチに腰を下ろすと、携帯の受信メールを開いた。
少しの不安と、大きな期待を胸に、ミズホへの返信を打った。
俺は、シュンっていいます。
君は?
たった2行。僕がミズホの名前を知っていたら、きっと怖がるだろうから、あえて名前を尋ねてみた。
昨日の葛藤が嘘のようにスムーズに送信ボタンを押した。
次に君からメールが返ってきたら、どうやって話を切り出そう。
大きな決断を、行動に移すとき、君はどんな気持ちだった?
ベンチから空を見上げて、僕は瞼を閉じた。