君に逢えない理由

どのくらい寝ていたのだろう。
手の中で震えだした携帯に、僕は目を覚ました。
目を擦りながら受信画面を開く。



 from:ミズホ
 
 私はミズホです。
 シュンは私を
 知ってるの?


嘘は、つきたくない。
でも、本当の事を話す勇気も僕にはない。
どうやって返そうか、悩んだ挙句、僕の気持ちだけ素直に話すことにした。


 
 俺は君を知らない。
 君も俺を知らないと思う。
 でも、俺のメールは
 君のもとに届いた。

 だから、この出会いを
 俺は大事にしたいんだ。

 君が嫌じゃなかったら
 俺とメールしてくれない?

 君に聞きたいことが
 あるんだ。



出会いをごまかした、少し罪悪感のある文章。
でも、僕の本心だ。
ミズホには、選択肢を作った。
これで彼女が、僕のことを拒否したら、この出会いはすぐに別れを迎えることになる。
それでも、彼女自身にこの出会いの未来を選んでほしいから、僕は聞いた。


携帯を閉じると、僕はもう一度目を閉じた。
昨日あまり寝ていないせいか、春の陽だまりがすごく気持ちよかった。


この日、ミズホからのメールは返ってこなかった。


 

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