君に逢えない理由

高校を辞めてからの一ヶ月、僕は自分なりに、自分の道を探しながら生活をしていた。
とりあえず、親の世話になってばかりという訳にもいかないため、近所のコンビニでバイトを始めた。


働く、という人生ではじめての経験は、僕を少し大人な気分にさせてくれた。
でも、やっぱり世間の目は厳しかった。


中卒の僕を雇ってくれるのは、せいぜいコンビニで、正社員なんて夢のまた夢だ。
資格なんかも持っている筈もなく、就職を目指す気持ちもこの一ヶ月で失いかけていた。


このままでは、最低だと思っていた今までの自分よりも、さらに落ちぶれてしまう。
焦っていないといったら、嘘だった。


5月に入ってからは、あの公園で時間をつぶすことも多くなっていた。
今日もバイトがお昼で上がりだったため、公園のベンチに座ってぼーっと空を眺めていた。


ミズホからの返信は相変わらずない。
それでも返信を待っている自分が少し情けなかった。
彼女にはもう、背中を押してもらったのだ。
これ以上、彼女にすがっていてもしょうがない。


日も傾き始めて、そろそろ帰ろうかと腰を上げたときだった。


ピリリリリ・・・・


携帯の着信音が響いた。
ポケットから取り出し、画面を見ると、知らない番号が表示されていた。

「・・・誰だ?」

無視しようと携帯をもう一度ポケットに押し込むが、一向に鳴り止む気配がない。
不審に思いながらも仕方なく、通話ボタンを押した。

「もしもし。」



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