君に逢えない理由


入学式を前日に控えた日、僕は現実から逃げるかのように朝からずっと街を歩いていた。
気がつけば、知らない道を歩いていて、初めて見る風景が目の前に広がっていた。
時計を見れば昼近くになっていて、気が付けば4時間近くうろついていた。


目に付いた公園に足を運び、手ごろなベンチに腰を下ろした。
僕の座った隣のベンチには、同じ年頃の女の子が雑誌片手にメールを打っていた。


視線を公園に戻せば、先の砂場で小学生が遊んでいる。
他に人はいない。


「おねぇちゃん!早くきてぇ!お団子作るんだから!」


砂場にいる小学生の一人が声をあげた。
兄弟と遊ぶついでに、近所の子供の遊び相手まで任されているのだろう。
どろんこじゃん、と呟きながら女の子は周りを見渡し、僕以外に人がいないと分かると、泥にまみれることを避けるためか、ベンチの上に雑誌と携帯を置き、砂場へ向かっていった。


しばらく彼女たちを眺めていると、隣の携帯が静かに鳴り出した。
小学生の騒ぎ声にかき消され、着信音は彼女には届かない。
どうしたものかと覗き込めば、メールの受信画面だった。
ならばいいかと、視線を戻そうとすると、ぱっと画面が切り替わった。
メールを送信したまま置いたのだろう。受信を知らせた携帯の画面は切り替わり、その前の受信メールを映し出していた。




それが、僕の運命を変えた瞬間だった。




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