君に逢えない理由
進学する高校は、女子高だった。
進学を決めたときは、事務所を辞めるなんて考えていなかったから、レッスンのことも考えて、事務所から近い高校を選んだのだ。
今考えれば、早くも転校したい気分だが、こればかりはしょうがない。
事務所の入るビルを見て、自分を奮い立たせるためにでも使うかと、少しでも前向きに考えようとしていた。
明日の入学式の準備をして、早めに寝ようかと考えていたとき、机の上の携帯が鳴った。
まだ鳴れない手つきで画面を操作し、受信ボックスを開いてみると、知らないアドレスが表示されていた。
本文には、短い文章が映し出されていた。
僕とメール
してくれませんか?
名前すら入っていない。
文章からして、知り合いでもなさそうだ。
「・・・誰?」
こういう時は、返信はしないほうがいい。
携帯を使った犯罪だってある時代だ。
そんなものに巻き込まれたらたまらない。
少しの恐怖を覚えながら、私は携帯を閉じた。
今日は早く寝てしまおう。
そう考えて、ベッドの中に潜り込んだ。
でも、自分の携帯に届いたメールに、言葉では言い表せない何かを感じていた。
間違い電話ならまだ考えられる。
でも、アドレスを適当に打ち込んで、運よく送信されることなんてあるのだろうか。
あのメールが、私のところに届いたことが、必然のような気がしてならなかった。
そしてメールが届いたこの夜は、私にとって運命を変えた、忘れられない夜になったのだ。