意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
「あれ? 竹中さん、どうしたの?」

そう声を掛けてきたのは裕樹先輩だった。

「傘がないとか?」

「いいえ、持ってます」

「どうして帰らないの?」

「それは、ちょっと…」

裕樹先輩からジッと見られ、思わず視線を逸らしてしまった。

「じゃあ、俺は帰るね。お疲れさま」

「お疲れさまでした!」

私はホッとして、頭をペコリと下げた。追求されなくてよかったな…

あれ?
裕樹先輩は一人だった。いつも浅田先輩と一緒に帰ってるはずなのに、どうしたんだろう…


しばらくすると誰も出て来なくなったけど、水嶋先輩はまだ来なかった。

きっと人に見られないように、ゆっくり来るんだな。
私は先輩を待たせちゃいけないと思ってすぐ来たけど、私も遅く来ればよかったなあ。

雨のせいで肌寒くなり、足元から徐々に体が冷えていった。
< 111 / 187 >

この作品をシェア

pagetop