意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
30分ほど待っても水嶋先輩は現れないので、トイレへ行きがてら、男子の部室を覗いてみる事にした。

もしかして、先輩は約束を忘れて早く帰っちゃったのかな。


部室には明かりが点いているので、中に誰かがいるはずだ。
もし着替えてたりするといけないので、ドアを少しだけそっと開いて中を覗いてみた。


そこで私が目にしたものは、信じられない光景だった。

こちらに背を向けて立っているのは、間違いなく水嶋先輩だった。
そしてその背中に手を周して抱き着いている女の子。

水嶋先輩の影でよく見えないけど、背の高さや髪の毛の感じで、たぶん浅田先輩だと思う。

浅田先輩は泣いているみたいで、ズズッと鼻をすする音が聞こえた。

水嶋先輩は片手で浅田先輩の肩を抱き、もう片方の手で浅田先輩の頭を撫でていた。

私はそっとドアを閉め、体育館を後にした。
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