意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜
水嶋先輩と一緒に部屋を出たお母さんが、すぐに戻って来た。

「先輩は?」

「帰っちゃったわ。お茶ぐらい差し上げたかったのに…」

「そう?」

「徹と水嶋君って、知り合いなの?」

お母さんは私の服を脱がしながら言った。

「バレーの試合で顔を合わせるらしいけど、知り合いってほどではないみたいよ。どうして?」

「ちょっと、一悶着あったの」

「え? お兄ちゃん、先輩に何か言ったの?」

「うん。『妹に手出したら、ただじゃ済まねえぞ』なんてね…」

「嘘。そんな事言ったの? もう、信じらんない…」

「私もびっくりしちゃったわよ…」

「で、先輩は、何て…?」

「ん…『そんな事、絶対しないよ』、だったかなあ」

「そうか…」

「メグ?」

お母さんは手を止めて、私の顔を覗き込んできた。

「え、なに?」

「そんな、がっかりしないの」

「が、がっかりなんて、してないよ」

「『何もしないから』って言いながら、手を出して来るものなのよ、男は」

「な、何言ってるの?」

「お父さんもそうだったわ」

「お母さん!」
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